韓国・洛山ケデホンの魅力と観光ガイド

歴史的背景と文化的意義

韓国の「洛山ケデホン」とは、ソウルの中心部に残る歴史的な城郭遺跡と美しい公園エリアを指します。この場所は、朝鮮王朝時代に首都漢陽を守るため築かれた「漢陽都城（ハニャンドソン）」の一部であり、東側の「駱山（ナクサン）」と呼ばれる丘陵に位置しています 。漢陽都城の城壁は日本統治時代に一部破壊されましたが、1970年代に復元され、現在は史跡第10号に指定される文化遺産として大切に保全されています 。この城郭は首都ソウルの東大門（興仁之門）から惠化門（ヘファムン）まで続いており、かつての防御施設としての威容を今に伝えています。歴史的な城壁と共に、周囲には伝統的な韓屋や古い町並みも点在しており、ソウルの歴史と文化を肌で感じられるエリアとなっています  。

一方、「洛山ケデホン」という名称には近年もう一つの文脈があります。これは2025年公開のグローバルK-POPアニメ映画『ケイポップ・デーモンハンターズ（K-POP DEMON HUNTER）』をきっかけに世界中の観光客の間で広まった呼び名であり、作品の舞台となった洛山公園の城郭道を示す愛称です 。この映画では洛山公園の城郭道が過去と現在が交錯する象徴的な背景として描かれ、公開後はSNS上で洛山公園が話題沸騰しました 。実際、映画公開前と比べて公開後の6～8月で「낙산공원（洛山公園）」に関するYouTubeやInstagram投稿が2倍以上に増加し 、韓国在住の外国人や旅行者がこぞってこの地を訪れる「ケデホン」ブームが起きています。

なお「洛山（ナクサン）」の名は、韓国東海岸にも縁があります。江原道襄陽郡には同じ名前を持つ洛山寺（ナクサンサ）という名刹があり、韓国仏教の聖地の一つとして有名です。新羅時代の671年に高僧・義湘（ウィサン）によって開創された古刹で、関東八景にも数えられる歴史ある寺院です 。こちらの洛山寺は山あいではなく海辺の岬に位置する珍しい寺院で、境内からは東海（日本海）の大海原を一望できます 。長い歴史の中で幾度も戦火や災害に見舞われながら、その度に復興を遂げた不屈の寺として知られています。ソウルの洛山公園とは地理的に離れていますが、同じ「洛山」の名を持つことから、首都の歴史遺産と地方の霊場という二つの洛山をセットで訪ねる旅も文化的な意義が深いでしょう。

建築の特徴と風情

洛山ケデホン（洛山公園の城郭道）は、朝鮮王朝時代の城壁建築の特色を色濃く残しています。城壁は大小の石を積み上げた堅牢な造りで、高台の曲線に沿って緩やかに連なり、ところどころに見張り台や門が配置されています。特に惠化門（ヘファムン）は現在も美しい伝統様式の小門として残り、木造の楼閣屋根と石造アーチが調和した姿を見せています。夜には城壁が暖色のライトに照らされ、古都の趣と幻想的な雰囲気を醸し出します  。近年の復元整備により、散策路は整備されていますが、石垣や勾配から往時の防御施設としての構造美を感じることができます。

また、この周辺エリアには韓屋（ハノク）様式の建物や昔ながらの住宅街も点在しています。城郭の北側には「長寿マウル」と呼ばれる集落があり、伝統的な瓦屋根の民家が残っていて静かな佇まいです 。南側斜面には「梨花洞（イファドン）壁画村」というストリート美術館が広がり、古い家屋の壁面にカラフルな壁画アートが描かれています 。この壁画村には韓屋を改装したカフェやアトリエもあり、伝統と現代アートが融合した独特の風情を楽しめます。実際、ソウル市長も「韓屋はソウルの固有の歴史と伝統を象徴する存在」であると語っており、韓国コンテンツにもたびたび登場するほどその魅力が見直されています。映画『ケデホン（K-POPデーモンハンターズ）』の劇中でも北村韓屋村の伝統家屋が何度も描かれており、海外ファンから大きな反響を呼びました。

一方、江原道の洛山寺に目を向けると、韓国仏教建築の粋を見ることができます。境内には極彩色の丹青（タンチョン）で装飾された本堂や多層塔があり、海岸の断崖には1925年に再建された八角亭「義湘台（ウィサンデ）」が優雅に佇んでいます 。義湘台は義湘大師が瞑想した場所に建つ見晴台で、青松に囲まれたその姿は東海の風景と相まって絵画のような美しさです 。また、境内の高台には高さ15mの白亜の観音菩薩像「海水観音像」が立ち、空と海を背景にしたその姿は荘厳そのものです 。韓屋とはまた異なる寺院建築の美があり、静謐な雰囲気の中に韓国の伝統美が息づいています。

観光客への魅力ポイント

洛山ケデホンの最大の魅力は、歴史と景観の調和です。ソウル市街を見渡せる丘の上に位置する城郭道からは、昼間は緑豊かな景色と古い城壁が映え、夜になると東大門やNソウルタワーの夜景がきらめきます 。特に夕暮れから夜にかけてはロマンチックなムードが漂い、城壁沿いに灯る街灯と眼下に広がるソウルの夜景とのコントラストは息を飲む美しさです  。洛山公園の頂上にある「遊び広場」から望む夜空に浮かぶNソウルタワーと瞬く都市の灯りは、恋人たちが愛を語らうのにぴったりなスポットとして知られています 。喧騒から離れて静かに散策できるため、都会にいながら癒しを感じられる場所としても人気があります。

観光客にとっては、歴史探訪と同時に“K-ドラマ”や“K-POP”ゆかりの地を訪れる楽しみも見逃せません。洛山公園はこれまでに『パリの恋人』や『火の鳥』など数多くの韓国ドラマや映画のロケ地となってきました 。韓流ファンであれば、劇中シーンを思い出しながら同じ場所で写真を撮ったり、好きなスターが歩いた道を辿ったりする体験は格別でしょう。最近では前述のアニメ映画の影響で、海外からも**“聖地巡礼”**と称して訪れる人が増えており、Instagramなどには洛山公園のフォトジェニックな写真が多数投稿されています 。城壁を背景に韓服（韓国伝統衣装）を着て撮影するサービスを利用する旅行者もおり、伝統×トレンドの発信地として注目度が高まっています。

江原道の洛山寺もまた、日本人観光客にとって魅力あふれるスポットです。海岸沿いの高台にあるこの寺院では、雄大な自然と精神文化の融合を味わえます。境内から望む紺碧の海は爽快で、波音を聞きながらの散策は心が洗われるようだと評判です。また、洛山寺は韓国の**「33観音聖地」の一つに数えられ、先述の海水観音像は願いを込めて参拝する人々で賑わいます 。朝日スポットとしても有名で、元旦の初日の出には全国から参拝客が訪れます。寺では外国人向けのテンプレステイ（寺院体験宿泊）**プログラムも行われており、早朝の暁鐘や座禅体験を通じて静寂なひとときを過ごすことも可能です。日常を離れ、仏教文化に触れながら自分を見つめ直す旅は、日本の方にも「癒し」と「気づき」を与えてくれるでしょう。

周辺スポットとの連携性

洛山ケデホン周辺には、他にも訪れる価値のある見所が数多くあります。以下に、洛山ケデホン観光と合わせて楽しみたい周辺スポットをまとめました。
• 梨花洞 壁画村（イファドン ピョックァマウル） – 洛山公園の南麓に広がるアートスポットです。約70人の芸術家と地元住民が参加し、80点以上の壁画が町全体に描かれています 。カラフルな天使の羽の壁画や石段に描かれた魚の絵はインスタ映え抜群で、日本の旅行雑誌でもたびたび紹介されています。カフェ巡りやフォトウォークを楽しみながら、韓国の下町風情と芸術の融合を堪能できます。
• 大学路（テハンノ） – 洛山公園の西麓に位置するエリアで、ソウル有数の演劇と文化の街です。100以上の小劇場が集まり、夕方には公演を宣伝する呼び込みの声が響きます 。公園散策の後にミュージカルや演劇を鑑賞するプランもおすすめです。また大学路にはおしゃれなカフェやストリートフードの屋台も多く、若者の活気に触れられます。
• 東大門（トンデムン）エリア – 城郭道を南へ辿っていくと、ソウル城郭の大門である東大門（興仁之門）に行き着きます 。その周辺はショッピング天国として有名な東大門市場が広がり、深夜まで営業するファッションビルやナイトマーケットがあります。洛山公園で静かな時間を過ごした後、徒歩で東大門に降りて韓国グルメや買い物を楽しむのも良いでしょう。
• 洛山寺 周辺（江原道） – 江原道の洛山寺を訪れる場合、周辺観光も見逃せません。寺院から徒歩で行ける**義湘台（ウィサンデ）では断崖から広がる東海の絶景を堪能できます 。すぐそばの紅蓮庵（ホンニョナム）は岩穴上に建つ小さなお堂で、床に空いた丸窓から下の海を覗くことができる神秘的なスポットです。海沿いには真っ白な砂浜の洛山海水浴場（ナクサンビーチ）**もあり、夏には海水浴客で賑わいます。洛山寺参拝と合わせて、雪岳山国立公園（ソラクサン）へ足を延ばすことも可能です。雪岳山は四季折々の雄大な山岳景観を楽しめる名所で、洛山寺から車で約20分と近距離にあります。海と山、両方の自然を満喫できる贅沢な旅程になるでしょう。

周辺地域全体で見ても、洛山公園と洛山寺はいずれも伝統・自然・癒しをキーワードに楽しめる観光地です。ソウル滞在中に洛山ケデホンを訪れたなら、ぜひ韓国の他の伝統スポットにも目を向けてみてください。歴史散策で心を落ち着け、カフェでほっと一息つき、さらに郊外に足を延ばして雄大な景色に感動する──そんな多彩な体験が日本人観光客の心に深い思い出を刻んでくれるはずです。

アクセス方法と訪問のベストシーズン

洛山ケデホン（ソウル洛山公園）へのアクセス: 最寄り駅は地下鉄4号線の惠化（ヘファ）駅です。駅2番出口から出て徒歩約10～15分で公園の入口に到着します 。途中、ゆるやかな坂道と階段を上っていく形になりますが、大きな案内板もあり迷わず辿り着けるでしょう。東大門歴史文化公園駅や東廟前駅、昌信駅からはマウルバス（小型コミュニティバス）も運行しており、これらを利用すると公園の近くまで便利にアクセスできます 。洛山公園は入場無料・年中無休で、24時間いつでも開放されています  。夜遅くまで散策できますが、足元が暗い箇所もあるため、夜間は安全に配慮して行動してください。

洛山寺（江原道襄陽）へのアクセス: 襄陽方面へ旅行する場合、ソウル高速バスターミナルから襄陽市外バスターミナル行きの長距離バスを利用する方法があります（所要約2時間半）。襄陽ターミナル到着後、タクシーで約10分（3～4km）で洛山寺に着きます 。ソウルから洛山寺直行の観光バスツアーも各旅行会社から催行されていますので、運転に自信がない方や時間を有効に使いたい方はツアー参加も良いでしょう。洛山寺は日の出から日没まで参観可能で、拝観料は無料です  。境内は広く起伏がありますので、歩きやすい靴で訪問してください。

ベストシーズン: 洛山ケデホン（洛山公園）は四季折々に異なる表情を見せます。おすすめは春と秋です。春には周辺に植えられた桜やレンギョウが城壁を彩り、暖かな日差しの下での散策は爽快です。秋には紅葉が美しく、公園全体が色づく様子は格別で、「紅葉の時期が最も美しい自然豊かな公園」として知られています 。夏は日中は少々暑いものの、夕方以降は涼しい風が丘の上を吹き抜け、夜景鑑賞に適しています。冬は空気が澄んで夜景の光が一段とくっきり見えるほか、運が良ければ雪化粧した城壁を見ることもできます。ただし冬季の夜間は冷え込みますので、防寒を万全にしてお出かけください。

洛山寺を訪れるなら、特に夏と冬の特別な体験が挙げられます。夏（7～8月）は東海岸の海水浴シーズンで、洛山海水浴場での海遊びと寺院観光を一度に楽しめます。また山門付近には蓮の花が咲き、青い海とのコントラストが写真映えします。冬（1月）は前述の初日の出を見る絶好の機会です。元旦には洛山寺で初日の出イベントが開催され、新年の幸運を祈る多くの参拝客で賑わいます。春（4月頃）は寺院周辺の桜並木がほんのりピンク色に染まり、静かな寺院に華やぎを添えます。秋（10月頃）は山寺ならではの紅葉が楽しめ、海と紅葉の取り合わせという珍しい景観に出会えます。年間を通じてそれぞれ魅力がありますが、訪問目的に応じて時期を選ぶと良いでしょう。

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日本人観光客にとって、洛山ケデホンは韓国の伝統文化・自然・癒しを一度に味わえる魅力的な目的地です。歴史好きの方には城郭や寺院の奥深いストーリーが心に響き、写真好きの方にはインスタ映えする絶景スポットが揃っています。ソウル旅行の合間に静かな時間を持ちたい時、あるいは韓国各地の名所を巡る旅の一環として、ぜひ洛山ケデホンを訪れてみてください。その昔、都を守った堅固な城壁に手で触れ、遠い海に祈りを捧げた観音様に思いを馳せるひとときは、きっと旅の思い出に深みと彩りを添えてくれることでしょう。

参考文献・情報源: 洛山公園および洛山寺に関する現地旅行ガイド記事   、ソウル市公式観光情報 、韓国旅行専門サイト（コネスト）  、並びに2025年報道資料 などを参照しました。各種データは2025年8月時点のものです。